8.18.2016

商品の売価の決め方、価格の決め方

“モノやサービスの価値”と“価格”のバランス」でも少しふれましたが、

経営者の仕事の中で、最も難易度が高く、高度で、重要なことに「値付け(値段を決めること)」があります。
値付けをちょっとでも間違ってしまえば、他社との競争に一瞬にして負け、仕事はなくなり、開発費も、人件費も、費やした時間も、すべてを無駄にしてしまいます。安くしすぎても、高くしすぎてもダメです。なので、決して簡単に決められることではありません。

弊社では、新商品を出す際、あらゆる競合になりそうな商品の価格を調べ上げ、どのぐらいなら、市場に受け入れてもらえるのかを比較検討しています。価格は、商品の見た目(デザイン)と全く同じように重要だと思っています。


それでは、具体的にどのように決めていけばいいのでしょうか。

「原価から算出する方法」と「市場での目標売価から算出する方法」があると思います。
今の時代、「原価がいくらかかったから、売価をこのくらいにする」というのでは往々にして失敗します。それは、今の時代、消費者は、商品の価格に対してとても厳しくなっており、いくらコストがかかったとしても、市場での適正価格でなければ、見向きもしないからです。

例えば、文具ならば、同じジャンルの競合商品の、商品名、デザイン(色合い、大きさ、仕様)容量、メーカー、製造国などを調べ、一覧表を作成します。そこから目標売価を設定します。

目標売価=原価(製造にかかったコスト)+流通コスト+利益

になります。もし「これでは利益が出ない」ということであれば、残念ながら企業努力が足りないのです。市場は生易しいものではありません。し烈な競争なのです。そこで勝てるのか、負けるのか、明らかな結果として現れます。

しかし、市場に「今までにない商品・サービス」を投入することができれば、自社で比較的自由度の高い市場価格を決めることができます。

弊社の商品「クリップファミリー」の例にとると、
競合商品を調べてみると、市場で出回っているクリップの売価は、8〜18個入りで、400〜600円でした。しかし、それらのパッケージを見てみると、たくさんクリップが入っているにも関わらず、パッケージ上では、どれも2〜4個しか入っていないように見えるものでした。そこで、弊社では、クリップ5個をすべて売場で見えるようにパッケージしました。台紙に5個留めてもらう組立のコストはかかるものの、結果としては、他社よりも多くクリップが入っているように見え、お得感を感じることができるパッケージデザインにすることができました。

「見た目価値(デザイン、容量)」と「目標売価」には密接な関係があります。ソフトドリンクやビールなどの飲料品は、そこをコントロールしている最たるものだと思います。売価は120〜220円ですが、原価は15〜30円程度だと思います。それだけ安いものを目標売価の見た目価値に合わせるために、広告やイメージ戦略に莫大な費用を使っています。

もし、自社で開発した商品の「見た目価値」が分からないようであれば、できるだけ多くの人に作ったものがいくらくらいに見えるか聞いてみることがオススメです。もし「380円くらいじゃない?」とか「1,000円くらいには見えるよね。」と言われたら、そのくらいの価格か、もしくはそれよりも0.5〜1割程度安く売価を設定することがオススメです。今の時代、「これお得だよね!」と思ってもらえるようでなければ、残念ながら売れません。

CDや書籍の場合、あまり売価の自由度がないので、ポスターやグッズを付けたり、作家と握手することができる握手券を付けているものもあります。そのことによってよりお得感を感じてもらうようにしているのです。

商品の売価の決め方、価格の決め方の手順を簡単にまとめると
1)競合リサーチ
2)自社商品の見た目価値のヒアリング
3)目標売価設定(市場適正価格)
になります。

商品を提供する側は、商品を買ってもらう側に、得をしてもらう必要があります。
そこが各社の腕の見せ所です。